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極上の孤独は、何故炎上しながら売れるのか

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出版不況と呼ばれる中で、売れ続けているのが、この本だ。

©gentosya.co.jp

中古でも新品同様の価格で取引され著者の下重氏は、TVでも、引っ張りだこである。

孤独≠淋しさと説く著者。

賛否両論を呼んだ前作『家族という名の病』から3年の、この本には何が書かれているのか。

SNSが普及した現在に問いかける本

孤独という言葉は『孤独死』という言葉がある一方、松重聡氏主演の深夜人気ドラマ『孤独のグルメ』の様に『SNSの評価に振り回される事なく、おひとり様を楽しむ』というイメージもある。

著者が本書で言及したかったのは、後者ではないかと思う。

本書の内容の半分は、SNSのつながりの苦しさを言及し、新社会人から大きな反響を呼んだ、故・菅野仁氏が上梓した
『友だち幻想』とカブる部分もある。正確にいえば、本書の良い部分は『友だち幻想』とカブっているので、下妻氏の諸作の賛否両論ぶりが気になる人は、こちらをおすすめする。

『友だち~』や『極上の~』に書かれている、SNSを通じた人間関係の息苦しさは、以下の通りだ。

1:話せば判るは、ある程度人間のできた相手にしか通じない
2:友達が沢山できればいいというのは幻
3:自分を偽って、無理をして、趣味のコミュニティに入るのはストレスが溜まる

だが実際は、学校生活や、会社で、自分を偽らなければ生活をしていけない人も大勢いる。学校や会社を離れても、彼らのストレスは収まることはない。

趣味の場でも、自分の好きな事で集まる人たちは、集団の中に、2~3人違う考えの人が居るなら、判っていて無視するのが現状だ。

それが無言の暴力になるのは判っていてやっているのである。

群れなければ意思表示が出来ない人は、極上の孤独を味わえない

と著者は断言する。

群れなければ意思表示が出来ない人の老後は哀れだ。周りに誰もいなくなってしまった時、毎日毎日何十年も前の思い出を昨日の事のように語る日々を送るしかない。新しい事に興味が持てなくなるのだ。

そうならない為に、著者は以下の事を著作で勧めている。世間一般の中高年が生き生きする為の生き方と真逆の様な気もするが、終活や、人生100年という言葉が当たり前になった現在、彼女の生き方も選択に入れるべきではと思う。


1:SNS離れし、他人に振り回されない生き方をする
2:趣味だけで話があう人との関係は断ち切る
3:自分に良い意味で責任が持てる人と深く付き合う

では、この本を支持している客層とは具体的にどの様な客層だろうか。

自立した人生を生きる事を勧めている

前作についてもいえるのだが、下重氏が著作で言いたいのは
どんな環境でも自立できり人生を送り、自らの行動、言動に死ぬまで責任を持つことだ。

群れて行動している人に囲まれている人や、お揃いにする事を強要されることにフラストレーションを感じている人にとって、この本はバイブルになるだろう。

私の知り合いでも、イベントの度に、ダサいお揃いのTシャツを作り、部下を使って売りさばかせる男が居る。彼は、お揃いのTシャツを着る事で団結力が生まれたり、自分にブランド力が付くと勘違いしているが、それは著者から言わせれば、かまってほしい寂しい人の裏返しだ。

前作『家族という名の病』では、年賀状をファミリー写真にする人の見えぬ暴力性についても書いていた。

何故今の40代~50代が結婚しないのか。結婚せず自由きままにしている人も居るだろうが、中には、この様な年賀状を毎年毎年未婚者相手に送ってくるくせに、結婚生活がつらいとボヤいたり、不倫している友人がバカバカしくなって結婚しない人や、結婚しても子供を産まない人もいるのだろうと、著者は指摘。
そうした意味でも、仕事に生きる、おひとり様にも支持されている本だ。

また本書の中では、歳離れた人と話せば、受ける刺激も多くなり、良い孤独が得られるというが、普段から『集団で群れる人』や『イベント好き』の人は、これに当てはまらないのではと思う。
彼、彼女らは、歳離れた人と話すとしても、同じ趣味や考えを持っている、自分と似ている人を選ぶので、最終的に得るものがない。

良い孤独を得られる人は、歳離れた人の選び方が違う。
映画『イブラヒムおじさんとコーランの花たち』はまさに、著者がおかれた状況とよく似ている。

母親不在で厳格な父親に、フランスの下町で育てられたモモは、雑貨店の老店主イブラヒムと友達になり、イスラム穏健派スーフィーの教えに基づき、自由で人を恨まない考えを身に着けるようになる。
やがて父親が行方不明になったモモは、イブラヒムの養子になるが、イブラヒムにも先立たれ、映画のラスト、大人になったモモは、憂いを帯び、イブラヒムの雑貨店を守る青年となるというものだ。

著者は、職業や見栄、集団にぶらさがってはいけないという事を、職業軍人からおちぶれた父から教わり、自分を殺してまで無理をしてまで人についていかなくていいという事を母親の生き様を反面教育にした。
そして自由で闊達な生き方は、母親の元に出入りしていた女性の旅芸人から教わったという。

人生誰を手本にするかで、生き方が決まるというが、集団で群れているとそれが難しいという事を著者は言いたかったのだろうと思う。

では反対にこの本が炎上する理由はどこにあるのだろうか。

何故この本は炎上するのか

この本が炎上する理由は、著者のリア充ぶりだ

SNSもインスタも使う必要がない、自慢する必要もないものを著者は手に入れている。著者の生き方を見ると、SNSやインスタは誰かに認めて貰いたい程度の幸せだという事実を突きつけられる。

©asahi.com

それを認めたくない人からの反撃が、凄さましい。おそらく反撃をしている人の多くは、SNSを頻繁に使い、アピールする事で自分の現在の社会的地位や交友を保っている人たちだ。だからこそ著者のリアルな生き方は、自分たちを否定された様なのである。

著者は終戦当時、小学校三年生。
この時代の女性が、一流の四大に入学し、NHKアナウンサーになるという事はなかった。高度経済成長期の波にもまれ、ほとんどの女性が高卒で働いていた時代である。

著者は、この時代の人にしては珍しく、家庭に入らずDINKSを貫き、TV関係で知り合った夫に家事をさせ、退職後は、茶道、クラッシックバレエと趣味三昧で、交友関係も選んでいるのである。
いくら幼少期が病弱で、両親が再婚同士という暗い過去があったにせよ、それは免罪符にならないだろう。

他人に期待せず、自立した方が人生自由になると書いていたとしても、彼女の生い立ち、生き方を見て『それじゃぁね』と読後に、本を売りとばす人の気持ちも判らないでもない。これがこの本が『一読しただけで中古市場に出る』理由である。

昭和の大女優・高嶺秀子は
『返事を書きたい手紙には宛名がない』と言った。

彼女は幼少期に実の母が亡くなった後、叔母に無理やり養女にされ、北海道から上京させられ親族一同の金づるにさせられる為に女優にさせられたという。いってみれば幼少期から他人に期待しない人生を送ってきた。

もしも下重氏の生き方に共感できないのであれば、高嶺氏について書かれた著作に目を通してみるのもいいかもしれない。

知らんけどは、もう通用しない世の中に

関西人独特の言い回しで、知らんけどというものがある。

主に京都と大阪で使われ、噂話、思っている事、愚痴の語尾につくのだが、目的は責任のがれだ。

著者はこれについても否定。これは良いことだと思う。
下手に噂話をしたり、LINEで短文をうつぐらいなら、公私共々物静かなや、言葉を選ぶ人を目指せば、品のある人になれる。著者はそこでスポーツ業界ではサッカーの中田選手や、野球ではイチロー選手を挙げている。

俳優の織田裕二の様に、知識もないのにスポーツ解説をするのは、見苦しいだろう。お茶の間の人々が池上彰を認めているのは知識と教養とリサーチの三本柱が裏付けされているからだ。喋ればよいというものではない。

著者は、思想を語る時には『私は~』とつけることを推奨している。言動に責任が持てない人は、ろくな年寄りになれないからだ。

いかがだろうか。
この本は賛否両論が多く、とらえ方も様々だが、良い部分をピックアップしていただき、議論してもらえば幸いだ。

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