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『町のでんきやさん』を作る、松下幸之助商学院ってどんな所?

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大型家電量販店が、ネット通販に押され熾烈な価格競争を繰り広げた末に閉店に追い込まれる一方で、町の電気屋さんが元気な地域もある。

この『町の電気屋さん』が、地域家電の業界団体加盟店の8割を占めると言われているパナソニックだ。

昔は、日立、東芝、三菱、シャープ、ソニー、船井と、メーカーごとの『町の電気屋さん』があったはずだが、それぞれのメーカーは後継者を育成しなかった事や、国内産業の担い手不足という事もあり、メーカーの町の電気屋さんは消滅しつつある。

では何故パナソニックの一人勝ちになったのか。


企業の売上の2割を『町の電気屋さん』が占めるという、この企業、どこに秘密があるのだろうか。

後継者養成施設を持っていた

パナソニックが一人勝ちになった要素で見逃せないのは、創業者・松下幸之助が半世紀も前に、後継者育成専門教育機関を作っていた事だ。これが
松下幸之助商学院である。

©panasonic.co.jp

滋賀県草津市にある商学院は『町の電気屋さんの二代目』もしくは『町の電気屋さん開業希望者』や従業員が全国から集まり、一年間寮生活を送る。

専門的な電気工事技術の基礎知識を得て、在学中に第二種電気工事士の資格を所得できる所も魅力であるし、ここの卒業生という事で、社会人としてのマナーと教養が身についていると、他の企業からは、判断される。

松下幸之助は、仕事が出来ても人間として欠陥があるという事では今日の産業人として望ましくないという思いで、この学院を作った。

その為、在学中の一年間の学生の生活は、警察学校や、名門野球部並の厳しさになるたかが『町のでんきやさん』になる為の研修と舐めてかかるととんでもない目にあうらしい。

朝5時45分に起床し、故郷に一礼してから、365日、暑かろうと寒かろうとラジオ体操と3キロマラソンを屋外でさせられる。

授業は、礼儀作法、マナー、技術研修、体育(武道)とあるが、朝一番の授業の前に、論語などを読み解く道徳の時間があり、正座をして聞かなくてはけないものがある。朝9時から一時間弱ある道徳の時間までの1時間半の間に、シャワー、洗顔、食事、朝の掃除を済まさなくてはいけないのだから、スマホをいじるヒマさえない。

髪型や服装についても厳しく、ヘアダイは禁止。シャツの襟に髪がかからないように清潔感を保つようにしなければいけないなどチェックが入る。夕食後から消灯までは自由時間なので、年代もバラバラの寮生は仲良くしている人が多いらしい。

©panasonic.co.jp

寮生は、卒業後は『町の電気屋さん』の二代目であっても、他の電気屋さんに修行に出るという、いわゆる『他の家の窯の飯を食べる留学制度』をパナソニックは設けている。その為に二代目であっても甘えることない良質な人材が育つのだという。

また学院では、明徳会という同窓会組織があり、5年に1回全国大会があり、卒業生は会員セミナーを受け、技術向上に勤めなければいけない上、『町のでんきやさんの奥さん』むけの『明徳会奥様セミナー』もあり、電気屋さんの奥さん同士の横のつながりもつくるのだという。

この様に、学院の存在と、卒業生の『横のつながり』が『町の電気屋さん』が生き残れた第一の強みだろう。

町のでんきやさんの現在

だが『町の電気屋さん』の数も高度経済成長期に比べて減りつつある。
ピーク時には5万店舗あった『町の電気屋さん』は、’00年に初めて創業者以外から社長に就いた中村氏による破壊的改革により激減。

今まで『持ちつもたれつ』だった『町の電気屋さん』の関係を中村氏は壊し、競争制度と意欲制度を持ち込み、ショップに本部から検査員を派遣し、認定基準を通過しない店舗は容赦なくショップ認定を取り消す一方で、売上のいい店舗は、ブランド扱いした店舗評価をした。
その結果、現在の『町の電気屋さん』は18500店舗。残っている店舗は、エリートという事になる。

現在競争を勝ち抜いて残る店舗の特徴は量販店をものともしない、サービスで顧客をつかんでいる事が特徴として挙げられる。
電球一個の交換でも、お客様の元に駆け付け、電気にまったく関係のないアルミサッシ交換でもかけつける『くらしまるごと相談室』のような存在になっているのだ。その為『町の電気屋さん』の店員さんや店長さんの中には、電気工事士だけでなく給水工事や液化石油ガス整備の資格を持つ人も居る。

彼らが、顧客の心をつかむポイントとしては、待っていても情報はつかめない、電気屋さんがお客さんの為に積極的に動く事だ。大名商売では勤まらないのである。

年配の方が、リモコン操作のテレビを購入して使い方が判らないと言われれば、使い方を描いた絵を置いておく、購入の際に助成金が出る場合は、電気屋さんが役所に出向くといった具合にだ。

これらの事は、車のディーラーでも車検の納車時にやっていないだろうし、ましてや大型家電量販店では、品物の修理の際、サービスセンターに預けっぱなしで、後は放置という事も往々にしてある。

この様な、おもてなし精神を育てたのは、他ならぬ幸之助が作った商学院のおかげなのだろうと思うし、5000人近くいると言われる卒業生の殆どが、入学した事で、技術を身につけられただけでなく心身を鍛えられたという。

だが現在、この商学院にも存亡の危機が訪れている。
昔は毎年200人居た学生が現在では、
10人程度というのだ。
これは『町の電気屋さん』の存亡の危機を意味している。

商学生に海外からの研修生を呼びよせるのも存続の一つの手なのではないだろうかと思う。

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