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忍者がタブレットでゴム手袋を買っているオチがウケるこのCM。
本業は何やってる会社なの?
と思った人も居るはずだ。
ここは、ミドリ安全という、国内の安全靴シェアトップを誇るメーカーである。
安全靴というと、自動車整備士が履く甲に鉄板が入った重い靴をイメージするが、最近の安全靴の用途が実に幅広い事が、この会社のキャラ立ちしたCMで判ってきた。
安全靴を日本に定着させた母
ミドリ安全は、安全靴と作業着をはじめとした、安全衛生用品の会社。
現社長の松村氏の母・元子さんが、日暮里にある倒産寸前の靴工場を女手一つで再生したのが前身だった。
©midorianzen.co.jp
松村氏の父は戦後、病気療養中で、元子さんは働かざるをえなかった。
町工場で毎日仕事に打ち込んでいた母親の背中を見て育った松村氏は、いつか自分はこの会社を継がなければいけないと、おぼろげに感じていたそうだ。
戦後、労働省(現:厚生労働省)が米国の製造現場にならい、安全靴を製造現場に導入しようと奨励していた事もあり、元子さんは、これからは安全靴が市場で必要とされると睨み、松村氏の祖父で退役軍人の祖父のつてを辿り、三菱重工や八幡製鉄などに安全靴を売りこみ販路を広げていったという。
こうして会社の基盤が出来た後、松村氏は’72年に大学卒業後、6年間丸紅に勤務し、31歳でミドリ安全の子会社に入社。
空気清浄機などを扱う子会社の売り上げは当然の事ながら、大手メーカーに押され、利益があがらず、最終的には本社に吸収合併されてしまう。
そこで松村氏が疑問に思ったのは、製造業の末端で働く人に、いかなる状況下でも快適に働いて貰うにはどうすれがよいのか事だった。
それが後の幅広いユニークな商品開発に繋がっていく事になる。
オモシロCMの裏に隠された安全へのメッセージ
松村氏が社長に就任したのは’91年、バブル崩壊時。
このまま同じ製品を作り続け得意先に納品し続けていては、近い将来競合他社に潰されるという危機感をもった松村氏は、「失われた20年」をチャンスに変えるビジネスに方向転換する。
ワーキングウェア「ベルテクセル」も、チャンスをビジネスに変えた商品の一つだ。どれだけ伸縮性があるかを再現するためにこのCMを作った所に注目が集まった。
20年前、整備士のツナギは、洗う度に関節部分が固く縮んでいくのが悩みだった。最悪の場合、関節部分だけ破ける事もあった。
ツナギの下にGパン+Tシャツを着て作業するので、夏は暑く通気性がないのは当たり前。着心地を追及できないのも当然だった。これらの悩みを解消したのがベルテクセルだ。
ベルテクセルは、社長が雪下ろし作業事故撲滅を目指す研究会に参加した時にメンバーの声を聞いた事がきっかけだった。
雪下ろしの作業服はどれもこれもニッカポッカみたいで格好が悪い上、作業効率が悪いという事から、ベルテクセルが産まれたのだ。
最新バージョンでは、普通のストレッチパンツと遜色ないものも生まれていて、飲食業界にも導入されている。
あったらいいと思われつつ、今の今までなかなか出てこなかった、折り畳みヘルメットは労働省の国家認定試験に合格した優れものだ。
独自の折り畳み多面構造を採用し、重さ430g、薄さ3.3cmという軽量モデルを実現しただけでなく、面白おかしいCMに最初注目が集まった。
フルフェイスヘルメットのCMも、こんなお手軽ヘルメットが工事現場にあればというニーズをさりげなくみたしている遊び心がある。
警備員の災害防止や事故防止という面で取り入れられたレインウェア・レインベルテは、ナンパする外人警備員というオチのCMが密かにウケている。
面白おかしいCMの裏に安全へのシニカルなメッセージを込めているのがミドリ安全の神髄であり、失われた20年を味方につけた起業精神だろう。
企業から得た信頼が個人へ
CMそのものは意味があるかどうか判らないがマクドやスシローをはじめとして飲食業界に1000万足以上激売れしている安全靴がある
それが『高耐潤性作業安全靴・ハイグリップ』だ。名前の通り油や水のある所でも滑りにくい靴で、飲食業界に引っ張りだことなっている。
元々は朝日ソーラーから、太陽光パネルを設置する時に屋根の上で作業員が滑らないようにする靴を作って欲しいという依頼で作ったものらしい。
そこから出来た靴が先程のハイグリップと、トビスニだ。トビスニは鳶職人や瓦職人が現場で足の裏が暑くならないようにという点で出来たもので、副産物的に出来たものである。
安全靴を作り続け、企業の信頼を得た後は、企業に何か問題点はないか聞き出し製品を作り出し、オモシロCMを作り出すことで、一般の人へ商品の知名度をあげた。
’08年には自社サイトを開き、さらに楽天にも進出。小さな町工場、DIYに勤しむ人にもミドリ安全の製品は幅広く支持されるようになった。
この他にもミドリ安全は、安全に関する関連サービスを少しずつ展開しているが、いずれもキャラ立ちしているCMが目を引き、これ買ってみようかなと思うものが目立つ。
これは働く事の安全って何?と、無関心な人たちにも、『働く事の安全ならキャラ立ちしてるCMのミドリ安全に』と会社全体でアピールすることに成功した一例ではないだろうか。
私たちは、働く事や趣味に没頭する事はあっても、安全につい無関心になりがちである。失われた20年を味方につけ、キャラ立ちしているCMで、安全に無関心な人を味方につけるミドリ安全に未来はあると言っても過言ではない。
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