2018年3月公開の注目映画まとめ
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来月公開の映画は、アカデミー賞ノミネート、受賞本命と言われる作品や、マーベルヒーローが公開になる。
©wanerbro.co.jp
2月末から公開の映画も、既に注目作が軒並み公開なだけに、2月~3月は、映画館から目が離せない。そこで注目作を追って紹介しよう。
シェイプ・オブ・ウォーター(3月1日より
ギレルモ・デル・トロ監督が、’60年代の冷戦時代を舞台に描くSFファンタジー。本年度オスカー最多13部門にノミネートされている注目作だ。
時は、’62年。
米ソ連冷戦時代の米国では、生物化学兵器の極秘研究が進められ、南米で捕獲された半魚人(ダグ・ジョーンズ)が研究室に搬送されてきた。
研究室で清掃員として働くイライザ(サリー・ホーキンズ)は、幼い頃の病が原因で喋る事が出来なくなり、心を許せるのは同僚のゼルダ(オクタヴィア・スペンサー)だけ。
イライザは、研究室の水槽に閉じ込められている半魚人と心を通わせるようになるのだが、彼はやがて安楽死させられる運命にあった…。
1つの作品に様々な要素を盛り込む事で知られるこの監督。
今回も、一つ間違うとサスペンスホラーになりかねない題材の中に、当時の格差社会や、マイノリティの問題、そして『ブレードランナー』を彷彿とさせる、SFの要素や、独特のビジュアルで人々を惹きつけている所が見どころとなる。
(3月1日から、全国の東宝、松竹、イオン、109他で公開)
15時17分、パリ行き
今年82歳になる、クリント・イーストウッド監督が、’15年8月にアムステルダム発パリ行高速鉄道で起きた、イスラム過激派テロの様子を、当事者をキャスティングし再現した映画。
時は’15年8月。
夏休みを利用して、パリ行の高速鉄道に乗っていた空軍兵士スペンサー、オレゴン州兵アレクと、2人の友達アンソニーは、イスラム過激派テロに巻き込まれる。
乗客554人の命が危険に晒される中、3人はいかにして危機を乗り越えたのか…。
この様な話の映画化は多いが、往々にして『ハドソン川の奇蹟』の様に、当事者に有名な俳優をキャスティングし、英雄視させ、脚色してしまうものが多い。
そうではなく『ユナイテッド93』よりも真実味を帯びた、当事者を使う手法で、リアル感に拘ったという事は、現代の映画界で貴重なのではないだろうか。
(3月1日から、全国の東宝、松竹、イオン、109他で公開)
ザ・シークレットマン
犯罪を犯したものは、相手が大統領であろうとも追い詰める
『96時間』で、娘の為なら暴走機関車の様に突っ走る、凄腕なのかどうか、いま1つ判らない元CIAブライアンを演じていたリーアム・ニーソン。
今回の標的は大統領、ニーソンの役柄は、FBI副長官マーク・フェルトだ。
時は’70年代半ば。
5人の男がワシントンDCの民主党本部に侵入し、盗聴器をしかけようとした所を逮捕された。
事件を指揮したFBIのフェルト(リーアム・ニーソン)は、ホワイトハウス関係者が絡んでいると推測。短期間で決着をつけるべく、賭けに出るのだが…。
ニクソンが辞職に追い込まれた『ウォーターゲート事件』は、事柄をスッパ抜いたワシントン・ポストの記者の活躍を描いた『大統領の陰謀』で時を超えて有名になった。
が、今の今まで、情報提供者とされていた『ディープスロートは何者だったのか』という事は、いまひとつふれられていなかった。
監督は『パークランド──ケネディ暗殺、真実の4日間』で、JFK暗殺を、関わった人物全員から見るという手法で描いたピーター・ランデスマン。
この映画の見所は、今まで語られる事がなかった『ディープスロートから見たウォーターゲート事件』という事だろう。
(2月26日より、梅田ブルグ7、新宿バルト9、Tジョイ、ヒューマントラストシネマ、コロナワールドシネマにて上映中)
ブラックパンサー
世界から狙われる鉱石を守る為、ヒーローとなった国王の戦いを描く、マーベルアクションシリーズの映画化。『42~世界を変えた男~』『ジェームス・ブラウン』のチャドウィク・ボーズマンが主演を務める。
アフリカ奥地にある超文明国ワガンダは、全てを破壊する程のパワーをもつと言われる鉱石・ビブラニウムの生産国。
鉱石と文明の存在を隠す為、ありとあらゆる手をつくし、代々の国王はワガンダを他の国からみて発展途上国に見せかけていた。
爆破テロで亡くなった父の後を継いだ、若き国王ティ・チャラ(チャドウィグ・ボーズマン)は、父の死により、ビブラニウムだけでなく、国は存亡の危機に晒される程、狙われてる事を知る。
ティは、ビブラニウムの中でも王家の人間にしか身に着ける事ができない強力なものを身に着け、戦士・ブラックパンサーとして戦うのだが…。
監督が『フルートベル駅で』のライアン・クルーガーなだけあり、キャストの大半がアフリカ系アメリカ人で、しかも富や知識の分配、トップにたつものの理想の心得を、アクションながら淡々と織り込んでいる。
(3月1日から、全国の東宝、松竹、イオン、109他で公開)
B.P.M
’90年代のフランスで、HIV感染者に対する偏見と闘った『ACT Up Paris』のメンバーたちを題材にした映画。
時は’90年代のパリ。
徐々に広がっていったエイズ感染にも関わらず製薬会社も医療業界も具体的対策を何も打ち出さなかった時代。
『Act Up Paris』には感染した人だけでなく、感染者の家族も集い、行き場のない哀しみや怒りをシェアしていた。
グループの中でリーダー的存在で、HIV陽性のショーンは、政治的にも訴えかけ、入ったばかりのHIV陰性のナタンの目にはまぶしく見えた。
だがショーンの病状が悪化し、動く事すらままならなくなると、ナタンは彼に添い遂げるようになるのだが…
政府がHIV患者に対し何も動かなかった時代の話となると、最近の映画では『ダラス・バイヤーズクラブ』が挙げられる。
HIV患者が世間の偏見と闘った映画は、この様に米国発祥のものが多く、『ぼくを葬る』のように静かな映画は、なかなか評価されない。
HIVを患いながら、世間に抗議し、命閉じるまで、どう生きたかを描いている映画としては、秀作ではないだろうか。
(3月24日から、ヒューマントラストシネマ有楽町、ユーロスペース、シネ・リーブル梅田、フォーラム系列映画館にて公開)
これらの他にも、現在公開中の『デトロイト』も秀作の1つである。
デトロイト暴動を題材に描いた、キャサリン・ビグローのこの作品が、オスカー賞レースに引っかからなかったのは、悪い意味で、まだまだホワイトウォッシングされているのだろう。
昨年のアカデミー授賞式では、司会者が受賞作を『LA.LA.ランド』と『ムーンライト』を読み間違えるというハプニングがあった。
これは、作り手に対する無意識のリスペクトのなさが出ているのではないかと思う。
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