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ニクソン政権映画といえば、先月公開された『ザ・シークレットマン』が記憶に新しいだろう。


©Klockwork.co.jp
ワシントンポストの新人記者が暴いたと言われていた『ウォーターゲート事件』を、長年明かされる事がなかった情報源『ディープスロート』の目線から描いた映画だった。

ディープスロートが実は元FBI副長官マーク・フェルトと知れ渡った時、当本人は認知症を患っていたというのは悲劇でしかない。
だがフェルトの意識がはっきりしていたら、この事実は世に出る事がなかったというのも哀しい事だった。

トランプ政権への不信感が漂う中、今年是非共チェックしたいのが、こうしたニクソン政権にまつわる映画だ。
現在公開中の映画も含め、他の作品のラインナップも観ていく事にしよう。

ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書

’70年代初頭、泥沼化していた、ベトナム戦争を分析・記録した米国防総省の最高機密文書『ペンタゴン・ペーパーズ』を暴露したワシントンポストの編集主幹たちの熱い戦いを描いた社会派ドラマ。

時は、’71年。泥沼化していたベトナム戦争の先が見えぬまま、介入戦争に突き進む米国。

NYタイムズが、ベトナム戦争を分析記録した米国の機密文書『ペンダコンペーパーズ』をスクープした。シンクタンク勤務で軍事アナリストのダニエル・エルスバーグ(マシュー・リス)がNYタイムズに情報をリークしたのだ。

彼は海軍エリートで戦争擁護派だったが、実情を目の当りにし反対派に転向。真実を明らかにしたいという思いから情報をリークしていた。

NYタイムズが連載記事として報道するのに遅れをとり、ライバルのワシントンポストの発行人キャサリン(メリル・ストリープ)は焦る。

新聞界発の女性発行人と揶揄されながらも引き下がるわけにはいかなかった。NYタイムズに遅れをとる形で『ペンダコンペーパーズ』の情報を入手し、編集主幹のベン(トム・ハンクス)を中心に連載を始める。

だがニクソン政権は司法省より手を伸ばし、両新聞社に発行停止命令を下す。ベンは法廷で政府と争う姿勢を見せるのだが…。

今でこそ、大手メディアとなったワシントンポストだが、この当時はローカルメディア扱いされていたという事は、政治スクープを取り上げるのは、社運をかけた決意だったとうかがえる。

編集主幹のベンが法廷で争う際に、既に有力メディアとなっていた、ボストングローブやシカゴサンタイムがワシントンポストの背中を押したのも判るだろう。

『スポットライト 世紀のスクープ』(15)で、タブーとなっていた修道士の性的虐待を暴いた新聞社の功績を脚本家した、ジョシュ・シンガーが脚本を担当している所も心強い。

’71年にワシントンポストが『ペンダコンペーパーズ』の存在を暴露した為、当時のニクソン政権は、情報管理に躍起になり、FBIを目の敵にするようになる。

ちなみに『ペンダコンペーパーズ』の作成を指示したのは、JFK政権の右腕と言われたロバート・マクマナラだが、彼はこの時何を思い、ペンダコンペーパーズの作成を指示したのか、という事は別の映画で描かれている。

フォッグ・オブ・ウォー~マクマナラ米国防長官の告白~

JFKの右腕、ジョンソン、ニクソン、歴代米国政権に使えた男が語る『米国は何故戦争をやめられないのか』そして『やめなければいけないのか』その理由。
マクマナラが亡くなる前に出した自叙伝と同時に収録されたドキュメンタリー。

ハーバード大卒、フォード自動車会長を経て、世界銀行総裁、国防長官を務めた米国のトップエリート、ロバート・マクマナラ。

彼は政治に関わって後悔している事はただ1つ『やめられたはずの戦いや戦争はいくらでもあったはずだ』という事だ。なぜその戦争をする必要があったのか。唯一とめられたのは『キューバ危機』だけだった。

マクマナラは、戦争がなくなると信じられるほど米国人は単純ではない。戦争をなくす為の戦いだと言い訳をして無駄な争いを今日もしている。と断言している。

知られていないが、マクマナラは第二次世界大戦時に、経営管理の理論を戦争に応用した人物でもある。だが広島・長崎に原爆を投下したカーティス・ルメイの下についていた時、彼はルメイに報告書を渡した事を後悔したという。

『戦争で勝つ為なら、一夜で10万人の人々を殺していいのか?原爆を落としてもいいのか?私の報告書は日本を弱体化するという目的だけだ。勝てば全てが許されるのは間違っている、ルメイも私も戦争犯罪者だった。』

ベトナム戦争が泥沼化し、トンキン湾事件を境に米国は介入戦争の道を突き進む。その時の報告書『ペンダコンペーパーズ』の作成を命じたのはマクマナラだった。

後にマクマナラは、この時の状況をこう語っている『我々の目が曇りがちだ。キューバ危機の時は、ソ連の側にたってモノを見る事が出来た。だがベトナム戦争の時は何故出来なかったのか?』当時米国では冷戦の一環とみなしていたベトナム戦争は内戦だった。

マクマナラは統計学の天才であり官僚としては忠誠心厚い男だったと言われている。

だがその彼が気が付いたのは、戦争をしかけた相手に対する価値観の違いを認めないと戦争は泥沼化し、無駄な死傷者をうむ上、情報を隠蔽すれば国民からの信頼も得られなくなるという事だ。

彼が読み間違えた戦争は、日本とベトナムだ。
どちらの国も国民の最後の1人になるまで戦うと、戦争当時は信じている民族だった今であれば、イスラム教徒である。
米官僚や米軍が、マクマナラが死ぬ間際に気付いた11の交渉術に気付いたとすれば、無駄ば国際的は争いはさけられたという事を教えてくれるドキュメンタリーだ。

フロスト×ニクソン

’77年に4500万人の人間が見たと言われる、伝説のトークバトル。
任期中に辞任した元大統領から謝罪を引き出したレポーターとは…。

ウォーターゲート事件で辞任した、元米大統領リチャード・ニクソン(フランク・ランジェラ)は、’77年、英国のコメディ番組の司会者・デヴィット・フロスト(マイケル・シーン)からインタビューを申し込まれ驚く。

破格の報酬である事と、ニクソンの補佐官ブレナン(ケヴィン・ベーコン)が、万が一の為の外交や法律に長けたメンバーを揃えた為、ニクソンは出演する事に。

映画の中でのトークバトルは、実際に番組内で行われたものとほぼ同じである事から、見応えある作品になっている。

ニクソンは、これを機会に失墜したイメージを払拭したいと願い、フロストは当時数十億円と言われる破格のギャラをニクソンに支払い、辞任前から単独インタビューを申し込み続け、成功すれば米国のショウビズに殴り込みをし、失敗すれば業界から去る決意をしていたという。

結果、フロストはニクソンから謝罪を引き出し、’65年~’07年まで、オバマ前大統領までの米大統領にインタビューし、ゴルバチョフ、プーチン、ネルソン・マンデラにも単独インタビューを申し込むアンカーマンになった。

米国には『事実には厳しく、人間には優しく』という言葉がある。ニクソンが過ちを認める瞬間がこの映画最大の見どころだが、事実は追及しても、ニクソン本人を責め立てる事はしなかったというフロストのトークバトルの導き方が決定打となったのではないかと思われる。

大統領の陰謀

ニクソンが失脚するきっかけとなった『ウォーターゲート事件』が、若い記者たちによって暴かれる一部始終を描いたのがこの映画。
ロバート・レッドフォードとダスティン・ホフマンという二大スターが、ワシントンポストの若い記者を演じ話題となった。

時は、’72年6月。
米ワシントンのウォーターゲートビルにある民主党本部に、5人組の男が不法侵入し逮捕された。

事件は物取りの犯行ではなく、ワシントンポストの新人記者ボブ(ロバート・レッドフォード)は、事件の背景に何かあるのではないかと、先輩のカール(ダスティン・ホフマン)に相談し、取材する事に。

政府は沈黙を貫き、5人組の弁護士は刑事事件の経験もない民間弁護士、しかもよく調べると共和党の息がかかった弁護士だった。

事件のもみ消しの背景に政治が絡んでいると睨んだ2人の前に現れたのは、謎のタレコミ屋ディープスロート(ハル・ホルブルック)だった。
彼の情報を辿ると、不法侵入した5人組や一連の事件は、ニクソン再選委員会の選挙資金に行き着くのだが…。

ウォーターゲート事件を暴いた記者たちの目線で描くのが、この映画だとすれば、そこまでの『お膳立て』を描くのが『ザ・シークレットマン』。

ウォーターゲート事件に行き着くまでの、ホワイトハウスの情報管理厳格化の流れを描いたのが『ペンダコンペーパーズ』となるだろう。

そして官僚の思惑を描いたのが、『フロスト×ニクソン』や、マクマナラのドキュメンタリーという事になる。

ニクソン政権1つをとってみても、これだけの映画が作られていて、今年に入って2作公開されているという事は、米国内でも政治に不満を抱えている人が多いという事だろう。

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